VOL.3 キャンパスのBest Dressed Men

ニューイングランドの文化を理解する上で忘れてならないのは、大学キャンパスとの関係です。1930年代から40年代にかけて、プリンストン、イェール、ハーバードといった名門大学の学生たちが着こなしていたスタイルは、その後のファッションに大きな影響を与えました。仕立てのいい服を身に纏いながらも「着飾って見えない」スタイリングをしていた彼らを、当時の服飾評論家たちはBest Dressed Menと評しました。

1933年の『Apparel Arts』には「大学生たちの洗練された無頓着さ(studied negligence)は、彼らの間で良い趣味の基準とされている。アメリカの大学生が卓越した外見を保つ秘訣は、決して『着飾って見える』ことなく、常に『よく着こなされている』ことにある」と記されています。

この美学は素材選びに表れています。オックスフォードクロスのシャツ、ブラッシュ仕上げのシェトランドセーター、ハリスツイードのジャケット、フランネルのトラウザー。彼らは高級で都会的な印象の素材ではなく、キャンパスの雰囲気に相応しいカジュアルな質感を求めたのです。

1962年の『Sports Illustrated』誌は、「ニューヘイブンの仕立て店——J.プレス、フェン・ファインスタイン、チップ、アーサー・ローゼンバーグなど——の代表者たちが、ケンブリッジ行きの列車に乗り込み、若い紳士たちが何を着ているかを確認するために2年ごとの巡礼を行う」と記しています。洋服をつくる仕立て屋がキャンパスのBest Dressed Menを無視することはできなかったのです。

そして、ブルックス・ブラザーズ、J.プレスなどアメリカのアイビースタイルを作り上げたブランドを裏方から支えてきたのがSouthwickです。これらのブランドのアイテムの多くはSouthwickの工場で、熟練された職人によって作られていました。

アイビースタイルの黄金時代は、1930年代から1960年代半ばまで続きました。しかし、カウンターカルチャーの台頭、大学の入学基準の変化、そして社会全体のカジュアル化により、アイビースタイルは急速に衰退していきます。

それでも、ニューイングランドが生み出した美学と価値観は消えることはありません。現在においてもアイビーやプレッピーと呼ばれるスタイルは愛されており、数多くのブランドがこの伝統を参照しています。ニューイングランドのテーラリング文化は、単なるファッションではなく、その哲学として今も受け継がれているのです。

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